上司を攻略しようとするほど、俺は消耗していた
俺を疲れさせていたのは、仕事より“見えない反応”だった。
送ったメールを、上司の反応が来るまで何度も読み返す。
送信済みフォルダを開いて、また読む。
「この書き方、まずかったかな」
「ちょっと強く見えたかな」
まだ返事すら来ていないのに、頭の中ではもう反省会が始まっている。
昔の俺は、これをよくやっていた。
そんな俺が最近、トランプ大統領のニュースを見ながら、ふと考えたこと。
この人の部下って、毎日どんな気持ちで働いてるんだろう。
政策の話じゃない。
選挙の話でもない。
純粋に、あれだけ強烈なボスの隣で働く人間のことが気になった。
上司がトランプだったら、俺はたぶん3日で潰れる
想像してみる。
俺がトランプ大統領の側近だったら。
朝、コーヒーを置いて予定表を開く。
昨日の夜まで固まっていた方針がある。
資料もできている。
関係者との調整も終わっている。
「今日はこれでいく」
そう思っていたら、昼前にボスの一言で話がひっくり返る。
午後になれば、テレビもSNSも騒ぎ始める。
夕方には、また別のニュースが飛び込んでくる。
もちろん、実際のホワイトハウスが毎日こんな感じだと言いたいわけじゃない。
外から見ている俺の勝手な想像だ。
でも、想像するだけで普通に胃が痛くなる。
俺はたぶん最初、真面目にやる。
数字を集める。リスクを整理する。資料を作る。
「大統領、この案にはこういう問題があります」
そう説明する。
それでも、「いや、俺はこっちでいく」と言われる。
次の日も説明する。また違う判断になる。
たぶん3回目くらいから、俺の頭の中で別の仕事が始まる。
「話、聞いてくれてるのかな」
「昨日と言ってること違わない?」
「俺の説明が悪いのか?」
その日の夜には、たぶん家で、「今日さ……」と愚痴を妻に話し始めていると思う。
会社員として20年以上働いてきて、似たような疲れ方には覚えがある。
規模はまったく違うけどね。
でも、上司そのものより、上司を理解しようとして消耗する感じには、なんだか身に覚えがある。
それでも、トランプ大統領のそばで働き続ける人がいる
そこで、もう一つ疑問が湧いた。
それならなぜ、そばで働き続けられる人がいるんだろうか。
現在の首席補佐官スージー・ワイルズは、トランプ大統領に反対意見を伝えながらも、最終的には本人の判断が優先されたケースがあったと報じられている。
何でも言うことを聞かせられるわけではない。
それでも、一緒に働いている。
ここが気になった。
俺はずっと、「優秀な部下なら、上司を正しい方向へ動かすもの」
と、どこかで思っていた。
ちゃんと説明すれば分かってくれる。
データを出せば納得してくれる。
こちらが正しければ、最後は考えを変えてくれる。
でも、もしかすると違うのかもしれない。
少なくともワイルズの働き方をニュース記事などで見ていると、上司を変えることそのものに全力を使っているようには見えない。
意見は言う。
違うと思えば伝える。
それでも最後にボスが決めたら、そこから先まで自分の責任にはしない。
実際にそう思っているかは分からない。俺の勝手な想像。
ただ、俺にはそんなふうに見えた。
自分がコントロールできる範囲を知っている人なのかもしれない。
俺は昔、上司の機嫌まで仕事にしていた
そこで、自分のことを思い出した。
会議が終わる。
「分かった」
上司はそれだけ言って、資料を閉じる。
怒られたわけじゃない。ダメとも言われていない。
なのに、席に戻る途中から俺の頭の中で勝手に反省会が始まる。
「あの言い方、まずかったかな」
「もう少し説明した方がよかったかな」
17時を過ぎても、まだ考えている。
メールを送れば、送信済みフォルダをまた開く。
上司から返事が来る前に、自分の文章を読み返す。
さっき見たばかりなのに、また見る。
返事が短ければ、「何か気に障ったかな」と考える。
直接何か言われたわけでもない。
それでも、帰りの車まで持って帰る。
赤信号で止まった瞬間、また昼の会議を思い出す。
家に着いて、風呂に入ってもまだ考えている。
湯船に浸かっているのに、頭の中では会議の続きをやっていた。
仕事そのものより、上司の頭の中を想像する仕事が増えていた。
しかも、この仕事には終わりがない。
答え合わせができないからだ。
上司の機嫌も、評価も、頭の中も、全部こちらからは見えない。
見えないものを何時間考えても、答えは出ない。
今思えば、俺は勝手に残業していた。
会社ではなく、頭の中で。
トランプ大統領の側近だったら、これをやっていたら本当に1週間ももたないと思う。たぶん、俺は三日で詰む。
上司の癖を知るのは仕事。でも、機嫌まで持ち帰らなくていい
40代になって、少しだけ考え方が変わった。
上司を理解することは必要だと思う。
どう報告すれば伝わりやすいか。
何を重視して判断する人なのか。
そのくらいは知っていた方が仕事は進めやすい。
でも、機嫌まで背負う必要はない。
意見を出したあと、その意見を採用するかどうかまで自分の仕事にしなくていい。
アドラーの『課題の分離』:その意見を採用するかは、上司の課題だ。
昔の俺は、ここが混ざっていた。
意見を言うところまでは自分の仕事。
なのに、その意見を上司が理解して、納得して、採用してくれるところまで自分の仕事だと思っていた。
だから却下されると、仕事を否定された以上に疲れた。
「なんで分かってくれないんだ」と、また家まで持って帰る。
でも今なら少し分かる。そこは別なんだと。
自分が上司になったら、逆の怖さも出てきた
ただ、この話は部下側だけでは終わらなかった。
今の俺は、部下を持つ立場でもある。
だから、ふと怖くなることがある。
俺の部下も、「今日、機嫌悪いのかな」「昨日と言ってること違わない?」
と思っている日があるかもしれない。
俺の中では理由がある。
状況が変わった。新しい情報が入った。
だから方針を変えた。
でも、説明しなければ部下には分からない。
こちらにとっては合理的な変更でも、向こうから見れば、
「また変わった」
で終わる。
以前の俺だったら、そのモヤモヤを家まで持ち帰っていたはずだ。
そう思うと、少し怖い。
だから最近は、方針を変えるとき、「昨日と変える。理由はこれ」
と一言添えるようにしている。
全部説明できるわけじゃない。
毎回きれいに伝わるわけでもない。
それでも、部下が俺の頭の中を想像しなくて済むようにはしたいと思う。
俺が昔、一番疲れていたのがそこだったからだ。
それでも、トランプ大統領の側近は何を思っているんだろう
実際、第2次トランプ政権では上級スタッフの交代率が高いと分析されている。
もちろん、その理由を全部トランプ大統領の個性に結びつけることは……….
できない。
辞める理由なんて、一人ひとり違う。
それでも考えてしまう。
あの巨大な権力と個性を持つ人の隣で、側近たちは朝どんな顔で出勤するんだろう。
「Good morning, Mr. President.」と挨拶を交わし、コーヒーを飲みながら、「今日は何が起きるかな」くらいに思えている人もいるのか。
何かがひっくり返っても、「また始まった」と心の中で流せる人もいるのか。
あるいは、俺が想像するよりずっと消耗している人もいるのか。
外からは分からない。
たぶん、これからも分からない。
でも、その分からなさを想像していたら、自分の職場のことが少し見えた。
帰る前に、一度だけ聞く
昔の俺は、上司の一言をそのまま家まで持って帰っていた。
返事が冷たかった。
意見が通らなかった。
メールの返信が短かった。
それだけで、帰り道から反省会が始まる。
でも最近は、そこで一度止めるようにしている。
上司に何か言われてモヤッとしたら、帰る前に一度だけ聞く。
「これは俺がやる仕事か。それとも、上司の頭の中を勝手に想像しているだけか」
自分がやる仕事なら、やる。
説明が足りなかったなら、明日もう一度話す。
確認が必要なら、確認する。
でも、相手が何を考えているのかを勝手に想像しているだけなら、そこで置いて帰る。
昔の俺には、この区別がなかった。
だから、見えない上司の頭の中まで背負っていた。
たぶん、俺を疲れさせていたのは上司だけじゃない。
上司の頭の中まで、自分の仕事にしていたことだった。
トランプ大統領の側近たちが実際にどうやって自分を保っているのかは、俺には分からない。
でも、ニュースを見ながらそんなことを考えた夜だった。
明日また、誰かの一言にモヤッとしたら、帰る前に一度だけ聞いてみる。
「これは俺がやる仕事か。それとも、上司の頭の中を勝手に想像しているだけか」
上司の頭の中まで、家に持ち帰らなくていい。
トランプ大統領の側近たちは、「Good night, Mr. President.」
そう言ってドアに手をかけた瞬間、「Wait. One more thing.」と帰ろうとした瞬間に呼び止められそうな気もする。
俺の勝手な想像だけどね。



面白く読ませていただきました
社会人あるあるですよね
共感の塊です
上司の機嫌も、評価も、頭の中も、全部こちらからは見えない。見えないものを何時間考えても、答えは出ない。今思えば、俺は勝手に残業していた。上司の癖を知るのは仕事。でも、機嫌まで持ち帰らなくていい…
前田さん⭐︎これって仕事だけじゃなくて人間関係もそうですよね。この記事ってビジネスだけじゃなく、人間関係で気配りが凄かったり、優しかったり、相手の気持ちが凄く気になってしまう方も助けられる知恵が織り込まれていますね✨素敵な気づきの投稿をありがとうございます😊✨🍀